Santenは、世界中の一人ひとりが「見る」に関する最善の体験を通じて、それぞれの最も幸福な人生を実現する世界を創り出すため、眼科医療エコシステムの発展加速の一環として眼科医療アクセス向上に取り組んでいます。
2022年10月に発行した統合報告書では、こうした活動の意義を社外ステークホルダーにも理解していただくべく、Santenの眼科医療アクセス向上に向けた具体的な取り組みを特集しています。今回は、当社担当者の思いと共にご紹介します。

地域特性に応じた医療アクセスの向上

医療を必要とする患者さんが適切な医療を受けられるよう、眼科医の手術や治療スキル向上、検査技師など医療従事者の教育に取り組んでいます。
新興国の多くで眼科医や検査技師などの医療従事者が不足しています。これが原因で患者さんの治療が十分に行えていない、そもそも疾患そのものの診断もついていない状況があると認識しています。人口100万人当たりの眼科医数は、日本は89.6人、米国は60.3人なのに対し、中国は11.3人、ベトナムは16.5人です。当社は、社会的意義のある製品を開発し、より多くの人の眼科医療へのアクセスを向上させることで、世界の未治療の患者数削減を目指しており、2025年までに6,000万人*1以上の患者さんに貢献することを目標としています。

*1 JMDCでの当社医療用医薬品における製品ごとの延べ推計患者数および当社出荷データをもとに、炎症・アレルギー、角膜、緑内障、白内障の疾患領域で推算した2019年度延べ貢献患者数は約4,300万人

※各国学会などの開示情報をもとに当社にて人口100万人当たりの眼科医数を推定

特に、地方など遠隔地の医療従事者は、最新の情報や手術トレーニングなどの教育機会に恵まれず、医療格差の原因となっているということも課題です。当社は外部パートナーとも連携し、眼科医の白内障手術や緑内障の治療スキルを向上させることで医療の質を高めることに加え、眼科検査を担う検査技師などの医療従事者の教育にも力を入れることで、医療アクセスの向上を図っています。

Orbisとの提携による眼科医療従事者への教育・スキル向上機会の提供

当社は、40年にわたり回避可能な失明の予防および治療に先駆的に取り組んできた世界的な非政府組織であるOrbis International(Orbis)と2020年より提携しています。

眼科医の緑内障専門知識とスキル向上に向けた取り組み(中国・ベトナム・インド)

<オンライントレーニング>

Orbisのオンライン教育プラットフォームである「Cybersight」では、さまざまな眼疾患のトピックスについてのオンラインコースや最新医学情報などの豊富な学習コンテンツを配信し、効率的な学習機会を提供することで、眼科医の専門知識の向上に貢献しています。「Cybersight」を活用することで、場所を問わずどこからでも標準化された教育プラットフォームにアクセスでき、かつ無料で世界標準の知識を学ぶことができます。また、高水準の教育コンテンツを多言語で配信することで、現地の眼科医や医療従事者に対して母国語での効果的な学習機会を提供しています。
2022年7月現在、6つのオンラインコースと20を超える緑内障の医学教育コンテンツを中国語で、2つのオンラインコースと4つの医学教育コンテンツをベトナム語で配信しており、中国、ベトナム、インドで、それぞれ1,700人、1,600人、および5,300人以上の眼科医が「Cybersight」を活用して学習しています。世界の多くの国と地域で67,000人以上の眼科医がこのプラットフォームを利用しています。

<診断および手術スキルの向上>

診断技術や手術手技を向上させるためには、設備、教材、プログラム、優秀なトレーナーなど、トレーニングのための適切な環境と十分な機会が必要です。より多くの眼科医に専門的かつ高水準のトレーニングを効率的に提供すべく、AIやデジタル技術を活用した診断のサポートや、オンラインによる遠隔指導、シミュレーションキットを活用した手術トレーニングなど、革新的なトレーニングプログラムを「Cybersight」を通じて提供し、新興国の眼科医の緑内障診断・手術スキルの向上に努めています。

眼科研修医育成能力の増強に向けた取り組み(ベトナム・インド)

質の高い眼科医療を提供するためには、研修医に対しても標準化された高水準の教育を提供し、十分に教育を受けた眼科医を増やすことが重要です。研修プログラムの評価ツールや教員の育成プログラム、デジタル技術を活用したトレーニングツールなど、教育水準の向上に向けたソリューションの開発と実装を通して、研修医育成プログラムの標準化と現地教育機関の研修医育成能力の増強に取り組んでいます。

SNECとの戦略的パートナーシップによる医療従事者への革新的教育プログラムの提供

当社は、眼科医療従事者に対する教育と研究において世界をリードする存在として国際的に広く認知されているSingapore National Eye Centre(SNEC)と戦略的パートナーシップを締結しました。オンライン・オフライン融合型の革新的な教育プログラムの共同開発と国際展開を進めています。
最初の取り組みとして、眼科検査を担う検査技師を対象とした教育プログラムをシンガポールで開始しました。今後、ほかの国や地域へ展開していきます。

統合報告書本特集の担当者は、当社が取り組む医療アクセスの向上について、次のように話しています。
「世界には、経済的に恵まれないなどの理由から、適切な医療を受けられない人々がいます。また、製薬会社には、経済的な状況に関わらず誰でも適切な医療が受けられる状態、つまり、医療アクセスの向上に取り組むことが期待されています。そこで今回、まずはSantenの取り組みや思いについて、ステークホルダーのみなさまに知ってもらいたく、統合報告書でその詳細を開示しました。Orbis・SNECとのパートナーシップ締結を実現した同僚の話を聞き、情熱をもって眼科医療エコシステムの構築に取り組むSantenに対して、私自身、あらためて誇らしく思いました。」

眼科医療アクセスの格差を解消するため、Orbisとのパートナーシップ提携を実現した担当者は、次のように話しています。
「視覚障がい者の数は今後30年間で6億人以上増加すると言われています。健康は人々にとって普遍的な価値であり、視覚障がいは生活の質だけでなく社会や経済にも大きな影響を与えます。当社では、高まる眼科医療へのニーズを満たし、眼科医療アクセスの格差を解消するため、外部パートナーとの提携を通じて、特に医療環境や水準に恵まれない国や地域において、眼科医療従事者の育成、能力や専門性の向上を支援し、持続可能で生産性の高い眼科医療の発展に貢献しています。一人でも多くのステークホルダーの皆さんにこれらの取り組みを知っていただけると嬉しく思います。」

眼科医療全体の生産性向上と適切な医療の提供を実現するため、Singapore National Eye Centreとの戦略的パートナーシップを構築した担当者は、次のように話しています。
「SNECとの戦略的パートナーシップ活動におけるProject management officeとして、SNECとのパートナーシップの地域展開に向けた戦略策定、パートナリング活動、パイロット活動/正式展開に向けた事業計画の策定とその展開を社内外のステークホルダーと共に推進しています。眼科コメディカル*2の育成は、タスクシフティング*3を通じた眼科医療全体の生産性の向上と適切な医療の提供につながります。Santenの持続的な事業成長に向けた基盤構築にも貢献することができるように、引き続き情熱を持って本活動を推進して参ります。」

*2 眼科コメディカル:眼科医を補助する看護師・視能訓練士・検査技師などの医療従事者
*3 タスクシフティング:医師以外の医療従事者に医療行為の一部を適切に委譲することで、限られた医療人材を効率的に活用する取り組み

 

Orbisのシミュレーションキットを使用した実践的な緑内障手術トレーニング

SantenとSNECによる医療従事者への教育プログラム実施の様子

関連ページ