40歳を過ぎたあたりから、みなさん老眼が気になってくるかと思いますが、最近は、スマホやパソコンなどで目を酷使する人が増えており、比較的若い世代の方でも、夕方や週末になると物がはっきり見えなくなる「夕方老眼」・「週末老眼」の方が増えてきて話題になっています。
眼鏡やコンタクトレンズで視力を矯正している方は経験していることも多いかと思いますが、はっきり見えない物を無理やり見ようとすることは、とても体に負担がかかることです。
目の疲れや痛みだけでなく、頭痛や肩こり、ときには吐気までも伴います。眼鏡やコンタクトレンズが必要とまではいかない程度の見えにくさでも、体に負担はかかっています。微妙に見えないアンバランスな状態を補正しようと体が頑張ってしまうからです。
はっきり見えない状態は、乾き目により涙の膜の表面がデコボコしていることが原因のひとつです。
歳をとるにつれて涙の分泌量が減ってきますので、ちょうど老眼世代の方たちは、毛様体筋の衰えによる見えづらさと相まって、かすみ目を強く感じるようになります。
比較的若い世代の方たちでも、TVやスマホやパソコンなどを見ることで、まばたきが減り、涙が蒸発しやすくなります。少し前までは、「だったらまばたきをすればいい」、と思われていましたが、最近の研究では、その状態が長時間続くことで涙腺の機能そのものが低下していき、涙の量が減っていくことが分かってきました。
目のかすみや疲れといった症状に対しては、眼科医に相談する、視力に応じた眼鏡やコンタクトを使用する、などの他に、涙の量を増やして涙の膜を安定させ、「涙の膜をきちんと張る」ことも有効です。
意識的にまばたきをすることで、涙の膜を張りなおし滑らかな表面にすることができます。
また、目を温めることも有効で、毛様体筋の凝りをほぐすとともに、涙腺の働きを活発にして涙の分泌量を増やすことができます。
最近は「コンドロイチン」という成分が、涙の膜を安定させ角膜を保護する働きがあると話題を呼んでいます。コンドロイチンは食べ物からの摂取では目の表面にまでは行き渡りづらいと考えられていますので、コンドロイチン配合の目薬などを使うこともおすすめです。
今は、目への負担が非常に大きい時代ですが、その一方で「目の疲れやかすみ程度で、眼科医にかかったり目薬を使うこともないだろう」と考える人も多いようです。
しかし目の不調を放っておくと、目の炎症や角膜の傷、体への負担からくる体調不良、といった慢性的な症状にもなりかねません。できることからで結構ですので、早めの対策をおすすめします。
1991年産業医科大学卒業、同大学眼科学教室入局し1995年東京歯科大学市川総合病院眼科学教室、1996年日立製作所(株)産業医を経て、2004年より慶應義塾大学眼科学教室に就任。2012年慶應義塾大学医学部大学院医学研究科卒業、博士号取得。現在、ドライアイ、スティーブンス・ジョンソン症候群、角膜移植術後のアジャストメントを専門とし、実用視力の開発に携わっている。