ものが「見える」とは、眼から入った光が脳に伝えられ、映像として認識されることをさします。まず、「瞳孔」から入った光は「水晶体」で屈折し、「硝子体」を通り、「網膜」に到達します。網膜に到達した光は電気信号に変換され、「視神経」を通じて脳に伝わり、映像として認識されます。眼のしくみをカメラにたとえると、水晶体が「レンズ」、網膜が「フィルム」の役割を果たします。
※イメージ図
「黄斑部」とは網膜の中心部にあり、ものを見るためにもっとも重要な部分です。黄斑部に異常をきたすと視力が悪くなったり、形や色など見え方も悪くなります。黄斑部の中央には小さなくぼみがあります。この部分を「中心窩」といいます。この部分に異常が生じると、視力の低下がさらに深刻になります。
加齢黄斑変性は黄斑部の加齢に伴う変化によって起こる疾患で、高齢者の視覚障害の原因のひとつです。黄斑部に発生する新生血管を伴う「新生血管型」と細胞の組織が徐々に萎縮する「萎縮型」に分類されます。
黄斑部に発生する新生血管のことです。新生血管は正常な血管ではないため、血管内の水分(滲出液)が漏れ出したり、血管が破れて出血を起こしやすくなります。
新生血管により黄斑部が障害されるタイプです。病状の進行が早く、急激な視力低下をきたします。早期に発見して治療をおこなうことが重要です。
加齢に伴い網膜の組織が徐々に萎縮していくタイプです。緩やかに進行しますが、新生血管が発生することもあるため、定期的に通院して検査を受けていただくことが望ましいです。
病名に「加齢」という言葉がつくことからも年齢が高くなると発症しやすくなります。とくに黄斑部の細胞の老化現象がおもな原因と考えられています。また喫煙者は発症する頻度が高いことがわかっています。太陽光、高血圧、偏った食生活、遺伝などの関与も指摘されています。
■ 加齢黄斑変性の原因
加齢黄斑変性はアメリカにおける失明のおもな原因です。
また、日本ではこれまで患者さんの数は比較的少数でしたが、高齢者の増加や生活様式の欧米化などにより患者さんの数は増えています。
滋賀県の長浜市でおこなわれた調査では、70 歳~ 74 歳の約3人に 1 人が加齢黄斑変性の前段階であり、100 人に 1 人が加齢黄斑変性の患者さんであることが報告されました。
ゆがんで見える、視野の中心が暗くなる・欠ける、色がよくわからない、見たいものがはっきり見えない、などがあげられます。
下に掲載しているアムスラーチャート(格子状の表)で見え方の変化を自分でチェックすることができます。
【使い方】
➀下のイラストを縦横6㎝の大きさになるように画面を調整します。
➁眼から約30㎝離し、めがねやコンタクトレンズをした状態で、片眼ずつ中央の黒い点を見つめてください。
■ アムスラーチャート
加齢黄斑変性の眼では、ゆがんで見えたり(下右図)、部分的に欠けて見えたりします。
見え方に違和感があるときは、眼科医にご相談ください。
病気の性質を知ったり、治療の方針を立てるためにつぎのような問診や検査をおこないます。
視力表などを用いて測定します。ゆがみや暗点については、アムスラーチャートでセルフチェックが可能です。
眼底にある網膜の状態を調べるためにおこないます。瞳孔の奥にある網膜を見るために、点眼薬で散瞳する場合もあります。検眼鏡を使用して直接眼底を観察する方法と写真にとって記録する方法があります。
腕の静脈に造影剤を注射し、眼底カメラで網膜や脈絡膜にある血管の状態を観察します。新生血管とその映り方で診断、病状の活動性を確認できます。検査はフルオレセイン蛍光眼底造影(FA)とインドシアニングリーン蛍光眼底造影(IA)の 2 種類があります。
光干渉断層計(OCT)という機器を使って、網膜の断面の状態を調べます。網膜のむくみや滲出液、黄斑新生血管などが観察できます。
おもに「抗 VEGF 療法」、「光線力学的療法」、「レーザー光凝固術」などの治療があります。
眼の中にある VEGF(血管内皮増殖因子)という物質が新生血管を成長させたり、滲出を起こしやすくしたりします。この VEGF のはたらきを抑えるために眼内に薬剤を注射し、黄斑部の新生血管の成長や滲出液を抑えます。
光に反応する薬剤を体内に注射し、その薬剤が新生血管に到達したときに弱いレーザーを病変部に照射する治療法です。レーザーにより薬剤が活性化され新生血管を閉塞します。光線力学的療法は、抗 VEGF 療法と同時におこなわれることがあります。
新生血管をレーザー光で焼き固める治療法です。周囲の正常な組織にも障害を与える可能性があるので、新生血管が中心窩から離れた場所にある場合にのみおこなわれます。
現時点において、一度変性した黄斑部をすべて元通りにする治療法はありません。
したがって、いずれの治療や対策も、視力の低下がわずかなうちにはじめることが大切です。
新生血管は再発することが多いため、定期的な検査と治療の継続も必要です。
■ 加齢⻩斑変性の⾒え⽅の変化(イメージ図)
多くの研究結果から、喫煙は加齢黄斑変性の危険因子となることが明らかにされています。喫煙している方には禁煙が強く勧められます。
太陽光のとくに青色光は、黄斑部の老化に関係するといわれています。屋外では帽子をかぶり、サングラスなどで目を守りましょう。
また、パソコンやテレビなどの青色光も同様に良くないといわれています。長時間のパソコンの使用やテレビの観賞は控えましょう。
多加齢黄斑変性の発症予防に良いとされる栄養素として、ビタミン A、C、E などの抗酸化ビタミンやルテインなどのカロテノイド、亜鉛などの抗酸化ミネラル、オメガ -3 多価不飽和脂肪酸などが知られています。
緑黄色野菜には抗酸化ビタミン・カロテノイドが豊富に含まれています。また、穀類、貝類、根菜類には亜鉛が含まれていますし、魚類などにはオメガ -3 多価不飽和脂肪酸が含まれています。これらの食品を摂取しバランスの良い食事を心がけましょう。
加齢黄斑変性の原因、症状、治療などについて紹介した小冊子です。
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