目の乾きを放置するとどうなる?原因や対処法について解説|アイケアマガジン|参天製薬

目の乾きを放置するとどうなる?原因や対処法について解説

公開日:2025.03.31

最終更新日:2025.03.31

目の乾きは、現代社会で多くの人が抱える目のトラブルのひとつです。スマートフォンなどの長時間使用による目の酷使や、乾燥した環境などにより、目の乾きに悩む人は増加傾向にあります。

目の乾きを放置すると、目の不快感だけでなく、目の機能に異常が生じる可能性もあるため適切なケアを行うことが重要です。

この記事では、目の乾きの原因、症状、対策や予防方法などをわかりやすく解説し、目の健康を守るためのポイントをご紹介します。

この記事の監修

医学博士/東邦大学医学部教授 堀裕一

東邦大学医学部眼科学講座教授、医学博士。1995年大阪大学医学部卒業後、大阪大学医学部付属病院で眼科研修を開始。2001年より米国ハーバード大学スケペンス眼研究所でドライアイに関する基礎研究に従事。帰国後、大阪大学および東邦大学にて、角膜移植、ドライアイ、コンタクトレンズ、角膜感染症、アレルギー等の眼科疾患に対する臨床および研究に従事し、2014年より現職。日本コンタクトレンズ学会理事長、アジアドライアイ協会副理事長、日本アイバンク協会常務理事。

1. 目の乾きとは

目の乾きは、一般的に、目の表面を覆う涙(涙液層)が不安定になることで発生する症状です。一時的な目の乾きから慢性的なドライアイに進行するケースもあります。

目の乾きを放置すると、視力の低下や目の痛みといったさらなる問題を引き起こす可能性があり、早めに適切な対処を行うことが重要です。

2. 目を保護する重要な役割を果たす「涙」

目の表面に広がる涙は、目を乾燥から守り、目の健康を保つために重要な役割を果たしています。

2.1 涙の構造

涙(涙液層)は、油の層(油層)と液層の2つの層から成り立っています。
目の表面側にある油層には、マイボーム腺というまぶたのふちにある腺から分泌される油分が含まれ、涙が蒸発するのを防いでいます。
液層は、ムチンという粘性のあるタンパク質を含む水様性の層で、目の表面に涙をとどめる役割を果たしています。

2.2 涙の重要な役割

● 角膜を保護する
涙は常に目の表面を覆っており、外部からの異物や菌から角膜を守るバリア機能を果たしています。また、涙には抗菌作用がある成分が含まれているため、目の感染症の予防にも役立っています。
涙が不足すると角膜がダメージを受けやすくなり、目の不快感や異物感を引き起こす可能性があります。

● 酸素や栄養を供給している
涙は、目の表面組織に酸素や栄養を供給し、細胞の健康を維持する重要な役割を果たします。正常な涙の分泌や、涙の性質が適切に維持されることで、目の健康が保たれています。

2.3 涙の分泌量や性質の低下がもたらす影響

涙の分泌量減少や質の低下によって、涙の安定性が低下すると、涙が目の表面にとどまりにくくなり、目の表面が乾燥しやすくなります。その結果、目の細胞に傷がつきやすくなり、炎症が起こりやすい状態になります。
これにより、目の充血や痛み、視力の低下などの症状が現れることがあります。

涙の安定性が低下する明確な原因は明らかになっていませんが、涙の構成成分であるタンパク質「ムチン」の分泌が減少したり、角膜上皮細胞の性質が変化したりすることなどが関連していると考えられています。

3. 目の乾きの原因

目の乾きには、さまざまな環境要因や身体的要因が関与しています。目の乾きの原因を理解することで、適切な対策や予防を行うことができます。

3.1 環境要因

● 室内や空気の乾燥
送風が目に直接あたるようなエアコンの使用や室内の湿度の低下は、涙が蒸発しやすくなり、目の乾燥を引き起こす要因となります。とくに、空気が乾燥する冬では、目が乾きやすくなります。

● スマホやパソコンの長時間使用
スマートフォンやパソコンなどのデジタルデバイスの画面を見続けると、まばたきの回数が減少し、涙の分泌量が低下する原因となります。デジタルデバイスによる作業を日常的に長時間行う方は、目の乾燥のリスクが高まることが明らかになっています。

● コンタクトレンズの使用
コンタクトレンズは涙の層を分断してしまうため、涙の安定性が損なわれ、目の乾きが生じやすくなります。

3.2 環境要因

● 加齢
年齢を重ねると、一般的に涙の分泌量や質が低下するため、高齢者では目の乾きが顕著にみられることがあります。
また、男性よりも女性のほうがドライアイにもなりやすいことが明らかになっており、とくに40代以降の女性に多いとされています。

● ストレス
涙の分泌量は、副交感神経が優位のときに増加します。ストレスがあると、交感神経が優位になり、涙の分泌量が抑えられる可能性があります。

● コンタクトレンズの使用
コンタクトレンズは涙の層を分断してしまうため、涙の安定性が損なわれ、目の乾きが生じやすくなります。

● 疾患による影響
膠原(こうげん)病や自己免疫疾患は、目の乾燥を合併することが多いと明らかになっています。とくにシェーグレン症候群では、目の乾きや口の渇きの症状が顕著にあらわれます。
目の乾き以外にも、口の渇きや関節の痛みなどの症状がみられる場合、医療機関を受診して必要な検査を受け、全身の健康状態を確認することが重要です。

● 薬の副作用
抗ヒスタミン薬、抗うつ薬、高血圧の薬など一部の薬には、涙の分泌量を減少させる副作用があり、目の乾燥が生じる可能性があります。

4. 目の乾きによってみられる症状

目の乾きによってあらわれる主な症状には、以下のようなものがあります。

● 目がゴロゴロする
● 目の中に異物感がある
● 物がかすんで見える
● 目が開けにくい
● 目が疲れやすい
● 目が重たい
● 目が痛い
● 目の充血
● 光が過剰にまぶしく感じる

目の乾きによる症状は多岐にわたり、「目が乾く」といった直接的な感覚がなくても、目の疲れや不快感、かすみ目、充血などの症状があらわれる場合が多くあります。

しかし、これらの症状は他の疾患の初期症状である可能性も否定できないため、目の乾きが長引く場合は、眼科医による診察を受けて正確な診断を得るようにしましょう。

5. 目の乾き・ドライアイの治療方法

日常生活に影響をきたすような目の乾きの症状がある場合は、専門的な治療を受けるようにしましょう。目の乾きを放置することで、ドライアイに繋がる可能性があります。

ドライアイ診療ガイドライン(2019)によると、ドライアイは「さまざまな要因により涙の安定性が低下する疾患であり、目の不快感や機能異常が生じ、目の表面の障害をともなうことがある」と定義されています。
ドライアイでは、目の保護機能が損なわれ、慢性的な炎症や角膜障害などが生じるリスクが高まります。生活の質を低下させる恐れもあるため、できるだけ早期に眼科を受診することが推奨されます。

眼科で実施されるドライアイの一般的な治療方法には、以下のような治療があります。

● 点眼薬による治療
涙の不足や潤いを補うために、人工涙液、ヒアルロン製剤などの点眼薬、眼の中から水分やムチンなどを出させる点眼薬が処方されます。涙の成分に近いものを使用することで、目の乾きによる症状や角膜の傷などを改善する効果が期待できます。

● 涙の出口を塞ぐ治療

涙点プラグとよばれる栓によって涙の排出される出口(涙点)を塞ぐことで、目の表面に涙をためる治療法です。点眼治療で効果が得られない場合などに検討されます。

6. 目の乾きの予防・対策方法

目の乾きを予防・改善するためには、日常生活での工夫や環境を改善することも重要です。

6.1 環境を改善する

● 湿度を保つ
室内が乾燥しすぎないように、加湿器などを活用して湿度を保つようにしましょう。エアコンを使用する場合は、エアコンの風が直接目に当たらないように風向きを調整するようにしてください。

● 長時間のデジタルデバイス作業は避ける
パソコンやスマートフォンでの作業を長時間続けるのは避けるようにし、1時間に10~15分程度は目を休めるようにしましょう。上目遣いになると目が乾きやすくなるので、デスクワークにおけるパソコンのモニターは、やや視線が下になる位置に置くと良いです。また、まばたきの回数を意識的に増やすようにし、涙の分泌を促すことも効果的です

6.2 目のケアを取り入れる

● 目元を温める
まぶたのふちには「マイボーム腺」という油を分泌する腺があります。目元を温めることでマイボーム腺からの涙へ油分の分泌が促され、涙が蒸発して目が乾くのを防ぐ効果が期待できます。ホットタオルなどを活用するのもおすすめです。

● 目薬を使用する
目の乾きが軽度な場合は、人工涙液やドライアイ用の目薬(医療用医薬品)で症状が改善することがあります。
目の乾きに効果が期待できる目薬の成分には、涙に近い成分である塩化カリウムや塩化ナトリウム、目に潤いをもたらすヒアルロン酸ナトリウム、目の表面を保護する作用のあるコンドロイチン硫酸エステルナトリウムなどがあります。

なお、目薬を長期間使用する場合は、眼科医に相談しましょう。

6.3 食事のバランスを見直す

最近の研究では、食事の栄養素が目の健康に影響を及ぼす可能性が指摘されています。したがって、目の健康を保つためには栄養バランスの取れた食事も大切です。とくに、オメガ3脂肪酸やレチノール(ビタミンA)がドライアイの予防や改善に関連していることが注目されています。

オメガ3脂肪酸(EPA、DHA)は、青魚(サバ、イワシなど)、マグロなどに多く含まれており、レチノール(ビタミンA)は、鶏や豚のレバー、ほうれん草、にんじんなどに多く含まれています。

これらの食材を積極的に摂取することを意識しながら、栄養バランスのよい食事を心がけるようにしましょう。

6.4 日常生活での工夫

● 適切なコンタクトレンズの使用
コンタクトの装着時間が長い方は、なるべく装着時間を短くするようにしましょう。コンタクトレンズの素材やレンズのケア材を変えることで、目の乾きの症状がやわらぐこともあります。

● 十分な睡眠を確保する
目の乾燥を防ぐためには、目を十分に休めることも重要です。不規則な生活習慣や睡眠不足がある方は生活を改善し、質の良い十分な睡眠を確保するようにしましょう。
また、過度なストレスは涙の分泌を妨げる可能性があるため、心身のバランスを整え、リラックスできる時間を意識的に取り入れることが大切です。

7. 目が乾きやすい人の特徴

目の乾きは、個々のライフスタイルや健康状態に影響されることがあります。以下の特徴にあてはまる方は、目の乾きを感じやすい可能性があります。

● デスクワークやパソコン作業が多い方
● スマートフォンを長時間使用する方
● コンタクトレンズを長時間装着している方
● 高齢の方
● 妊娠中の方、出産後
● 更年期の女性
● 低栄養状態の方
● シェーグレン症候群などの自己免疫疾患をもつ方
● アレルギー体質の方
● 目の乾きの副作用がある薬を服用している方
● 目に傷や炎症がある方
● 目の手術をされた方
● 糖尿病などの全身疾患がある方
● 過度なストレスを感じている方

8. 東邦大学医学部 堀裕一教授にお話を聞いてみました

Q

サプリメントで目の乾きは改善できるの?

A

乳酸菌やオメガ3脂肪酸を含むサプリメントが、目の乾きの改善に役立つ可能性があるという研究があります。ただし、効果には個人差があります。持病や薬を服用している方は、サプリメントを使用する前に医師に相談するようにしましょう。

Q

目は冷やさないほうがいい?

A

目の乾きがある場合は、冷やすよりも温めるほうが効果的です。ただし、目が充血して熱をもっているときには、冷やすことで症状がやわらぐ場合があります。どちらの場合も、温めすぎたり冷やしすぎたりしないよう、適度な温度でケアすることが大切です。

Q

コンタクトレンズを使用していますが、目が乾きやすい。どうすれば良い?

A

目が乾きやすい場合は、コンタクトレンズの装着時間をできるだけ短くするよう心がけましょう。また、人工涙液タイプの目薬を使用するのも効果的です。最近では、保水性の高い素材を使用したコンタクトレンズなどもあります。装着時間やコンタクトレンズの選び方については、眼科医に相談することをおすすめします。

Q

目の乾きは治ることはない?一生目薬が必要になるの?

A

目の乾きはさまざまな要因によって生じているため、完全に治すことは難しいと考えられています。しかし、適切なケアを続けることで症状をやわらげ、不快感を減らすことは可能です。環境を整えたり、目薬を使ったりすることで、日常生活での目の負担を軽くし、快適さを保つことが大切です。

9. まとめ

目の乾きは、目の不快感や異物感、かすみ目、充血などの症状をともなうことがあり、放置すると視力の低下や目の痛みを生じる可能性もあります。しかし、目の乾きは、環境や生活習慣の改善、日常生活の工夫などにより予防・改善することが可能です。

涙の役割を理解し、適切なケアや予防を行うことで、目の健康を守りましょう。目の乾きが続く場合や症状が重い場合は、早めに眼科で診察を受け、適切な治療を受けることをおすすめします。

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