花粉などによる目のかゆみの対処法は?かゆみの原因やおすすめの目薬成分を解説
公開日:2025.03.31
最終更新日:2025.03.31

花粉のシーズンになると、くしゃみや鼻水、鼻詰まりなどの鼻の症状以外にも、「目のかゆみ」が現れることがあります。かきすぎてヒリヒリしたり、目がゴロゴロしたりなどの経験をお持ちの方も多いでしょう。
花粉などによる目のかゆみは、適切な対処を行うことで症状の緩和が期待できます。
今回は、花粉などで目がかゆくなる原因や、その対処法についてくわしく解説します。花粉が飛散しやすい時間帯の目安も紹介しているので参考にしてください。
目次
この記事の監修

医学博士/東邦大学医学部教授 堀裕一
東邦大学医学部眼科学講座教授、医学博士。1995年大阪大学医学部卒業後、大阪大学医学部付属病院で眼科研修を開始。2001年より米国ハーバード大学スケペンス眼研究所でドライアイに関する基礎研究に従事。帰国後、大阪大学および東邦大学にて、角膜移植、ドライアイ、コンタクトレンズ、角膜感染症、アレルギー等の眼科疾患に対する臨床および研究に従事し、2014年より現職。日本コンタクトレンズ学会理事長、アジアドライアイ協会副理事長、日本アイバンク協会常務理事。
1. 花粉などによる目のかゆみはアレルギー性結膜炎が原因

花粉により目がかゆくなるのは、アレルギー結膜炎の症状が出ているためです。花粉だけでなく、ダニやハウスダストなど、さまざまなアレルゲンによって引き起こされるアレルギー疾患を総称してアレルギー性結膜炎と呼びます。
1.1 アレルギー性結膜炎とは
アレルギー性結膜炎とは、Ⅰ型アレルギー反応によって結膜に炎症が起こる疾患のことです。アレルギー反応には、Ⅰ型からⅣ型まで4つの型があります。
このうち、アレルゲンが体内に侵入して15~30分ほどで症状が現れる即時型のものがⅠ型アレルギーです。
アレルギー性結膜炎は、花粉やハウスダストなどが主な原因となります。1992~1994年に厚生労働省(厚生科学研究事業におけるアレルギー総合研究事業疫学班)が調査(※)したところ、人口のおおよそ1/3が、アレルギー性結膜炎を含む何らかのアレルギー疾患に罹患しているとの結果が出ました。
※出典:「アレルギー総論」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-17.pdf)(2025年3月31日に利用)
アレルギー性結膜炎と似た症状が出る疾患に、ウイルス性結膜炎や細菌性結膜炎、クラミジアなどがあります。花粉の飛散時期と関係なく目のかゆみが出た場合は、他の疾患である可能性も考慮しましょう。
1.2 アレルギー性結膜炎で見られる症状
● 目の充血
● 結膜下出血
● 目やに
● 目がゴロゴロする
● かゆみ
● 白目がぶよぶよになる
かゆみは、アレルギー性結膜炎のもっとも多い症状で、まぶたの裏側や結膜に炎症が起こることで生じます。
目の充血は、目に存在する血管が拡張することで起こります。結膜下出血とは、通常の充血とは違い白目がべったりと赤くなる症状のことです。
目やにもアレルギー性結膜炎の合併症状として見られる場合がよくあります。目やにがゴロゴロする異物感もよくある症状です。
かゆみは、まぶたの裏側や結膜に炎症が起こることで生じます。白目がぶよぶよになる結膜腫脹が見られるケースもあります。アレルゲンや細菌、ウイルスなどにより結膜が炎症を起こし、結膜がぶよぶよに腫脹してしまうのです。
2. 花粉などで目がかゆいと感じる原因

花粉で目がかゆいと感じるのは、免疫機能の過剰な反応が原因です。免疫は通常であれば細菌やウイルスなど外部から侵入してくる異物にしか反応しません。
しかし、人によっては花粉が異物と見なされ、免疫機能が働いてしまいます。免疫反応が起こると、目に炎症が起こり、かゆみが生じるのです。
目のかゆみの原因となる物質として、ヒスタミンが知られています。ヒスタミンは、免疫機能に関わっている肥満細胞などから分泌される物質です。
ヒスタミンが分泌されるとアレルギー症状が引き起こされ、目のかゆみやくしゃみ、咳や鼻水などの症状が現れます。
3. 花粉などで目がかゆいときの対処法

花粉などによる目のかゆみは、かきむしらずに早めに対処することが大切です。かゆいからとかきむしると、かゆみだけでなく目の充血や痛みなどの症状も現れる可能性があります。
ひどくなると目に傷がつき視力に影響することもあるので注意しましょう。ここでは、花粉で目がかゆいときの対処法を6つ紹介します。
3.1 花粉対策にはメガネやマスクの着用が効果的
アレルゲンとなる花粉が飛散している時期は、メガネやマスクを着用しましょう。可能な限り花粉との接触を減らすことで、目のかゆみをはじめとした諸症状の緩和が期待できます。
メガネやマスクの使用により花粉の付着をどれくらい防げるのかを調べた実験では、次のような結果が出ています。
〈メガネ〉
メガネなし | 通常のメガネ | 花粉症用のメガネ | |
---|---|---|---|
結膜上の花粉数 | 平均791個 | 平均460個 | 平均280個 |
〈マスク〉
マスクなし | 通常のマスク | 花粉症用のマスク | |
---|---|---|---|
鼻粘膜上の花粉数 | 平均1,848個 | 平均537個 | 平均304個 |
※出典:「厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 感覚器障害及び免疫アレルギー等研究事業(免疫・アレルギー等研究分野)/花粉症に対する各種治療法に関する科学的根拠をふまえた評価研究(総合研究報告書)/主任研究者:今野 昭義(千葉大学大学院医学研究院)/平成12年度総括・分担研究報告書」(厚生労働科学研究成果データベース)(https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/4492)をもとに作成
どちらの試験も、花粉ボックスを使用して行われました。顔面頭部を覆うクリアボックスにスギ花粉1mg(約3万個)を散布し、結膜や鼻粘膜への花粉の付着数を調べたものです。
花粉症用メガネとマスクの使用により、目や鼻への花粉付着を大幅に減らせます。このことから、メガネやマスクの着用は花粉の対策として有効なものの1つといえます。
3.2 花粉が多い時間帯の外出を控える

※出典:環境省「花粉症環境保健 マニュアル 2022」(https://www.env.go.jp/content/900406385.pdf)を加工して作成
花粉の飛散数は、1日の中でも変動します。スギ花粉の場合の飛散ピークは、午前中と日没前後の2回です。開花したスギの花粉が朝に放出され、風にのってスギ林周辺から郊外や住宅地へと飛散します。
お昼ごろには一旦ピークを過ぎますが、日没前後にもう一度ピークがくるので注意してください。これは、夕方になり気温が下がると、空気の対流により上空にある花粉が落ちてきたり、地面に落ちていた花粉が舞い上がったりするためです。
気象条件によって変わるので必ずこのタイミングで飛散ピークを迎えるわけではありませんが、花粉の飛散時期は午前中と日没前後の外出は控えた方がよいでしょう。
3.3 帰宅したら洗眼薬で目を洗う
花粉の飛散時期に外出した場合、帰宅したら早めに洗眼薬で目を洗うのも効果的です。洗眼薬は市販のもので構いません。ただし、洗眼のしすぎには注意しましょう。
用法用量を守らずに使用を続けると、目を保護する役割をしている涙の層まで洗い流してしまい、傷つきやすくなる可能性があります。
3.4 目を冷やす
花粉などによる目のかゆみがあるときは、保冷剤をタオルで包んだものを目にあてて冷やしてあげましょう。冷感によりかゆみが軽減される他、拡張した血管を収縮させて充血を緩和する効果が期待できます。保冷剤が手元にない場合は、冷たい水を含ませたタオルを使用してもOKです。
ただし、冷やしすぎには注意する必要があります。目を冷やすと、目の表面を覆っている水分の蒸発を防ぐ働きがある油分の分泌が妨げられ、涙の質が下がって目に傷がつきやすくなってしまう恐れがあります。どうしてもかゆみが我慢できないときに冷やすとよいでしょう。
3.5 目薬を使う
目のかゆみの症状があるときは、目薬を使って症状を抑える方法もあります。花粉などにより目がかゆくなるのは、アレルギー反応が原因です。
アレルギー反応を目薬で抑えてあげれば、かゆみも落ち着きます。市販薬にはアレルギー用の目薬が多く販売されているので、まずは市販のものを使用しても問題ありません。
ただし、市販の目薬に配合できる成分の種類には制限があります。1週間程度使っても症状の改善が見られない場合は、該当製品の添付文書を持って、医師・薬剤師または登録販売者に相談するようにしましょう。
3.6 飲み薬を使う
目薬以外に、飲み薬を使う方法もあります。アレルギー症状を抑える成分が配合された飲み薬を使うことで、花粉による諸症状を抑えることが可能です。
しかし、飲み薬だけで目の症状を完全に抑え込むのは難しいため、効果が不十分な場合は目薬の使用も検討しましょう。飲み薬と目薬は併用しても問題ありません。
4 花粉などによる目のかゆみに使われる目薬の成分

花粉などにより目がかゆいときに使われる目薬の成分には、主に次のような種類があります。
● 抗アレルギー薬
● ステロイド薬
市販の目薬の場合は、これ以外の成分も含まれていることがありますが、ここでは抗アレルギー薬とステロイド薬に絞って特徴を見ていきましょう。
4.1 抗アレルギー薬
抗アレルギー薬とは、アレルギー反応を抑えるための薬です。花粉が体内に侵入すると、ヒスタミンやロイコトリエンなどアレルギー反応を起こす物質が放出されます。
抗アレルギー薬は、これらの物質が放出されるのを抑える働きがあります。
花粉症など、アレルギー性結膜炎によるなどによる目のかゆみに使われる抗アレルギー薬には、次のようなものがあります。
● エピナスチン※
● エバスチン
● セチリジン
● フェキソフェナジン
● ロラタジン
● ビラスチン
● デスロラタジン
● オロパタジン※
※上記成分のうち、この2種以外は内服薬に配合される成分ですが、この2種はアレルギー性結膜炎の治療に用いられる点眼薬 にも含まれていることがあります。
4.2 ステロイド薬
ステロイド薬もアレルギー反応を抑えるのに効果があります。抗炎症効果に優れているため、特に炎症が原因で起こる目の症状に効果的です。抗アレルギー薬の点眼では効果がなかった場合にも用いられます。主な成分は以下の通りです。
● フルオロメトロン
● デキサメタゾン
● デキサメタゾンメタスルホ安息香酸エステルナトリウム
● ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム
なお、ステロイドが配合されている目薬は市販されていません。
5. まとめ

なお、ステロイドが配合されている目薬は市販されていません。
花粉などにより目がかゆくなるのは、アレルギー性結膜炎の影響です。かゆみの他に、目の充血や目やに、目のゴロゴロ感などの症状が見られることもあります。
花粉による症状は、花粉の飛散が終わらない限り自然に良くなることはありません。できれば、花粉が飛散する時期よりも前からしっかりと対策を始めましょう。