糖尿病網膜症

糖尿病網膜症とは

● 糖尿病って怖い病気ですか?

日本国内で糖尿病が強く疑われる人と可能性が否定できない人を合わせると約2,000万人いるといわれています¹⁾。糖尿病の初期では自覚症状がほとんどないため軽視されがちですが、血糖の高い状態が続くことで、全身に様々な合併症を引き起こします。
特に、「網膜症」、「神経障害」、「腎症」は3大合併症といわれ、多くみられる合併症です。
合併症が進行すると深刻な状態に陥ってしまうこともあります。糖尿病は合併症が怖い病気なのです。

1)平成30年版厚生労働白書-障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会に-

■ 糖尿病の主な合併症

糖尿病の主な合併症を説明したイラスト

糖尿病網膜症の原因

● どうして、糖尿病で眼が悪くなるのですか?

眼の一番奥、眼底には網膜という神経の膜があり、多くの毛細血管があります。糖尿病の患者さんの血液は、糖が多く固まりやすいため、毛細血管が詰まりやすくなっています。毛細血管が詰まると、血液の流れが悪くなり、網膜に酸素や栄養素が不足し、これが糖尿病網膜症の原因となります。進行した場合には眼の中で大出血が起こり、失明に至る場合もあります。
また糖尿病網膜症では、病的な血管(毛細血管瘤)や網膜のダメージにより、ものを見るために重要な黄斑にむくみ(浮腫)が発生し、視力が低下したり、ものが歪んで見えたりする糖尿病黄斑浮腫に至ることもあります。

■ 眼の構造と糖尿病による眼の合併症

※( )内は有病割合²⁾

眼の構造と糖尿病による眼の合併症を説明したイラスト

2)糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版)

糖尿病網膜症の症状

● 糖尿病網膜症になると失明するのですか?

糖尿病網膜症になったからといって、すぐに失明するわけではありません。
糖尿病網膜症は、網膜の状態などから進行の段階が3つに分けられます。
末期になるまではほとんど自覚症状がないため、気づいたときには進行していることがあります。このため、視力が良くても眼科で定期的な検査を受けることが大切です。

■ 糖尿病網膜症の進行段階

糖尿病網膜症の進行段階を説明したイラスト

● 若いうちは、糖尿病による眼の合併症の心配をしなくても大丈夫でしょうか?

糖尿病網膜症は50歳未満の視覚障害の原因疾患として第2位となっています³⁾。
さらに、糖尿病網膜症の初期でも合併することのある糖尿病黄斑浮腫に気をつけなければなりません。糖尿病網膜症が進行していない段階でも合併するということは、年齢が若い方でも糖尿病黄斑浮腫を発症するということです。
糖尿病黄斑浮腫を合併してしまうと、ものが見えづらくなります。そのため、お仕事にも影響が大きく、それまでと同じ生活をすることは困難になります。
早期発見、早期治療が重要です。

■ 50歳未満 視覚障害の原因疾患の割合³⁾

50歳未満の視覚障害の原因疾患の割合を示したイラスト

3)森實祐基 わが国の視覚障害認定の推移, Current Therapy, 38, 108, 2020

■ 糖尿病黄斑浮腫の見え方(イメージ)

糖尿病黄斑浮腫の見え方のイメージイラスト

ページ下部の「見え方自己チェック」をお試しください。
チェックするときは、片眼ずつ。 両眼で見ると気づかないことがあります。

糖尿病網膜症の治療

● 血糖コントロール

単純糖尿病網膜症では、血糖コントロールによって、眼底出血が改善することもあります。
また、ほかの治療の効果を十分なものにするためにも、血糖コントロールが不可欠です。

■ 血糖コントロールと毎日の生活

血糖コントロールと毎日の生活で心がけることを説明したイラスト

■ 血糖コントロール目標値⁴⁾

血糖コントロールの目標値を説明したイラスト

4)日本糖尿病学会 編・著:糖尿病治療ガイド2022-2023,P.34,文光堂,2022

● レーザー光凝固術

レーザー光凝固術は、網膜にレーザーを照射して、新生血管の発生を防ぐ方法です。
この治療で視力が回復するわけではありませんが、網膜症の進行を阻止することが期待できます。

レーザー光凝固術を説明したイラスト

● 硝子体手術

新生血管が破れて硝子体に出血を起こす硝子体出血や、網膜が眼底から剥がれる網膜剥離が起きた場合には、硝子体手術が必要となります。暗い眼内を照らしながら、吸引カッターで出血を吸ったり、剥がれた網膜をもとにもどします。

硝子体手術を説明したイラスト

● 糖尿病黄斑浮腫の治療

糖尿病黄斑浮腫に至った場合、以下のような治療もあります。
糖尿病黄斑浮腫では眼の中にむくみ(浮腫)が生じていますので、むくみを改善することができるお薬を硝子体に注射します。

➢抗VEGF薬注射

むくみにはVEGFという物質が悪影響を及ぼしています。VEGFの働きを抑えることで、むくみを改善します。

➢ステロイド注射

むくみの原因となっている炎症を抑えることで、むくみを改善します。

硝子体注射を眼球断面図を用いて説明したイラスト

糖尿病網膜症で失明しないために

● 糖尿病といわれたら、必ず眼科で検査を受けてください。
 そして眼科受診を続けてください。

医療の進歩とともに糖尿病網膜症の失明者数は減少しているといわれています。しかし、それでも糖尿病網膜症が原因で視覚障害者になる人は、年間1,700人にのぼります⁵⁾。
今は大丈夫でも、糖尿病患者さんが網膜症を発症するリスクは糖尿病になってからの期間が長くなるほど高まっていきます⁶⁾。だから見えていても眼科受診は継続してください。

5)厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 分担研究報告書
視覚身体障害者認定の実態疫学調査(2019)
6)Kawasaki, R. et al. Incidence and progression of diabetic retinopathy in Japanese adults
with type 2 diabetes:8 year follow-up study of the Japan Diabetes Complications Study(JDCS).
Diabetologia. 54, 2011, 2288-94.一部改変

■ 糖尿病網膜症のリスク⁶⁾

糖尿病網膜症のリスクを糖尿病になってからの期間でグラフにして示したイラスト

● 定期的に眼科の検査を受けましょう。

定期的な検査を受けることによって、適切な時期に適切な治療を受けることができます。

● 眼科で行った検査結果は、糖尿病眼手帳などに記録してもらいましょう。

自分の眼の状態をしっかり把握することができます。
白内障や緑内障など、ほかの眼の病気がある患者さんは、医師と相談して検査の頻度を決めましょう。

■ 精密眼底検査の目安²⁾

精密眼底検査を受ける頻度を説明したイラスト

2)糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版)

● 糖尿病は仲良くすれば怖くない。一緒に大切な眼を守りましょう。

■ 見え方自己チェック

下のイラストを縦横6㎝の大きさになるように画面を調整します。
眼から約30㎝離し、めがねやコンタクトレンズをした状態で、
片眼ずつ中央の黒い点を見つめてください。

見え方自己チェックイラスト

糖尿病網膜症の小冊子

糖尿病網膜症の原因、症状、治療などについて紹介した小冊子です。

糖尿病 仲良く付き合い眼を守る

 

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