多くの会社では、コンプライアンス部門と言えば、従業員にとってユーモア・連携・売上増加とは遠いイメージであることが少なくありません。コンプライアンス部門は、従業員が倫理観を持ち、法規制を遵守し、社会的責任を果たすことができるような方針やプログラムを確立する責任を担っています。企業にとって不可欠なガードレールであるにもかかわらず、コンプライアンス部門と一緒に仕事をしたいという話はあまり聞きません。しかし、Santenは例外です。

2020年より、Santenのグローバル・コンプライアンス部門は、グローバル・コンプライアンス・ヘッド バイスプレジデントのロバート・ヴァン・リアーが指揮を執っています。ヴァン・リアーは、2000年代初頭に営業担当者として製薬業界に入り、製薬企業数社でコンプライアンスのキャリアを築いた後、Santenに入社。製薬業界で働く以前は俳優を目指していました。その経験や情熱が、現在の仕事に深みをもたらすスキルへとつながっています。

俳優業からコンプライアンスへ

俳優とはコミュニケーターです。稽古や実演を通じて、創造性、共感性、柔軟性、傾聴、チームワークなど、演技に不可欠な一連のスキルを身につけます。ヴァン・リアーは、従業員、医師、患者さん、支援団体と仕事をする際にもこのスキルを活用し、オープンで信頼できる関係を築きながら、コンプライアンスへの肯定的な見方を浸透させています。

 

「私はコンプライアンスを、ビジネスとコンプライアンス部門とのパートナーシップだと考えています。その意味では、コンプライアンスは演技と似ています。俳優は台本と演出が与えられ、観客が物語に引き込まれるよう、協力してまとまりのある演技を提供します。コンプライアンスにおいては、私たちは一連の法律や規制に基づき、関係者が台本に従うことができるよう導きながら、パートナーや顧客、患者さんなどに対して物語を語る手助けをしています」

フロリダ州マイアミで生まれ育ったヴァン・リアーは、大学卒業後、俳優としてのキャリアを追求するためにニューヨークに移りました。その後ロサンゼルスにたどり着き、大学院の学位取得と製薬業界の営業職への転身を果たしました。

「その後、法曹の仕事に魅力を感じ、営業部から法務部へと転身したいという思いがあり、法科大学院に戻ってJ.D.(法学博士号)を取得しました。営業と法律の世界をつなぐコンプライアンスという分野に惹かれたのです。自身の経験から、営業が直面する課題を理解していましたし、製薬業界の営業は独特ですので、営業部門がこの業界でうまく仕事を進めていく手助けをしたいと思ったのです。私たちは厳しく規制された業界で、政府の薬価償還、薬剤、患者さんなどに対応しています。営業経験と法律に関する知識を組み合わせることで、私はさまざまな部門のパートナーとなり、彼らの安全を守りながら成功を支援することができると考えています」

俳優時代のヴァン・リアー

ヴァン・リアーがSantenに興味を持ったのは、長く豊かな伝統を持ちながら新たな挑戦にも積極的に取り組む企業で、グローバル・コンプライアンス機能の成長に貢献する機会に惹かれたからです。

コンプライアンス・シェルパとして

Santenでヴァン・リアーは、グローバルにコンプライアンス部門を統括し、現地の状況や地域性を考慮しながらプロセスのグローバル化に取り組んでいます。彼はチームに対して、制限を受け入れることよりも可能性を広げることの重要性を強調し、目標を達成する方法を見出すことを奨励しています。

「私たちは共通の目標を持つチームです。毎年、部門方針や目標を発表するキックオフを行い、私は全体計画を、各チームリーダーは地域ニーズに沿った計画を発表します。私はリーダーと毎月のミーティングで進捗状況等を確認し、年に数回はグループ全体でのミーティングを行い、互いの経験や苦労、成果を共有しています」

ヴァン・リアーは、規制や倫理基準を遵守すると同時に、より広範なビジネス目標を理解することが重要だと考えています。コンプライアンスはビジネスを妨害するものではなく、パートナーであると捉えるアプローチは、彼の積極的かつ戦略的な考え方から来ています。

「私は自分の立場を、何世代にもわたってエベレスト登山のガイドを務めてきた先住民であるシェルパになぞらえています。彼らはエベレストを知り尽くしています。もしあなたがエベレストに登りたいなら、自力で登るのではなく、シェルパを雇うでしょう。シェルパはあなたの達成したいこと、そのための最善の方法を理解しています。彼らは、旅の全ての行程をあなたと共に歩み、あなたをガイドし、危険を回避する手助けをし、山頂に到達するという目標を達成するために安全を守ってくれるのです。コンプライアンスにおける私たちの仕事は、あなたをガイドし、ナビゲートし、理解することです」

Santenでのコンプライアンスの役割

Santenは、目の健康に特化した企業として、世界中の患者さん、消費者、医療関係者に価値ある製品とサービスを提供することで、「Happiness with Vision」の実現に貢献することを目指しています。「近年、患者さんとのコミュニケーションは注目の話題となっており、政府は厳格なコンプライアンスに則って実施されているかどうかを綿密に調査しています。倫理基準に沿って行動し、メッセージを適切に発信することで、私たちは患者さんに医薬品を届けることができ、現地の法律や規制を遵守することができるのです」とヴァン・リアーは続けます。

当局が透明性と倫理的な行動にますます重点を置くようになっている今日では、コンプライアンスは、企業が患者さんとの複雑なやり取りをナビゲートするのに役立ちます。Santenのすべてのコミュニケーションが、社内と社外の規制の両方を遵守していることを確認し、規制違反、罰金、風評被害のリスクを軽減します。コンプライアンスの徹底した監視がなければ、不注意による現地法の違反、患者さんのプライバシーに関する懸念、違反の疑いのあるマーケティング慣行の通報など、企業は重大なリスクに直面する可能性があり、これは企業の評判を悪化させ、製品に信頼を寄せる人々にサービスを提供することができなくなる可能性があります。

目標と課題

ヴァン・リアーは最近、グローバル第三者デューデリジェンス・プログラムの構築プロジェクトを完了したことが評価され、社内表彰を受賞しました。

「第三者デューデリジェンス・プログラムは、法規制の背景にある根本的な社会問題や意図を考慮したうえで、社員が適切な行動を決定できるよう設計されています。医療従事者や政府関係者の汚職や贈収賄は、多くの国で重大な社会問題となっており、医療行為や保険制度に歪みをもたらしています。これは、患者さん、医師、地域社会にとって、適切な医療へのアクセスを妨げる可能性があります。この問題に対処するためには、Santenだけが法的要件を遵守するだけでは不十分です。協力関係にある人々を巻き込み、影響を与えるよう努めることで、私たち全員が倫理的かつより大きな社会的利益のために事業を推進しなければなりません」

長期的には、ヴァン・リアーはコンプライアンス部門がデジタル時代の新たなリスクに対応することを目指しています。彼は、グローバル化の課題、特に国によって規制が微妙に異なることを認識し、全社ルールと各国の文化や法的な違いとのバランスを取ることに努めています。

「製薬会社はますます新しく複雑なコンプライアンス上の課題に直面しています。デジタルヘルスの技術や人工知能の急速な拡大もあれば、データプライバシーや患者さんの安全性に関する規制の強化もあり、リスクはますます多様化し管理が難しくなっています。一貫性を維持するためにはグローバル化されたシステムとプロセスが不可欠ですが、地域を超えてこれらの整合を図ると、しばしば業務上の摩擦や非効率が生じます。重要なのは、現地の規制に適応でき、かつグローバルな監視に対応できる拡張性を備えたコンプライアンス・インフラ体制を構築することです。何百万人もの人々の健康と幸福に影響を与えるこの業界において、企業の成長を促進しつつ誠実さを確保するというのは、絶妙なバランスが求められるのです」

「今後、Santenのコンプライアンス部門は、最高水準の倫理的・法的基準を維持しながら、価値ある効果的なソリューションを患者さんに提供し続けることができるよう、全部門と緊密に協力していきます」とヴァン・リアーは決意をあらたにしています。

 

ロバート・ヴァン・リアー
バイスプレジデント兼グローバル・コンプライアンス統括責任者

Santenに入社し、北米エリアのコンプライアンス担当から現職へ。日本を含めたグローバルでの包括的なコンプライアンスプログラムを統括している。キャリア初期には、約8年間ファイザーで製薬営業担当として勤務。その後Santen入社まで、複数の製薬企業でコンプライアンス分野のリーダーを歴任した。ヘルスケアおよび製薬業界での2 0年以上の経験を活かし、グローバル・コンプライアンスの方針・基準、内部通報ホットライン、HCPエンゲージメントプロセス、FMV計算ツール、第三者デューデリジェンス・プログラムなど、倫理的な事業運営と強固なリスク管理を支える枠組みやツールの開発を主導。積極的なコンプライアンスの施策を推進し、倫理的行動とビジネスの成功の両立を支えている。
コンコード・ロースクール(パデュー大学グローバル)で法務博士号を、カリフォルニア州立大学サンバーナーディーノ校でビジネスマーケティングの学士号を取得。

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