地域の能力開発

Santenは、事業分野である眼科領域における医療アクセス向上に取り組み、眼の疾患や不具合に起因する世界中の人々の社会的・経済的な機会損失を削減することを目指します。

途上国における若手眼科医師育成

当社は、ICO (International Council of Ophthalmology、以下ICO)の3か月のフェローシッププログラムを支援しています。このプログラムは、経済的発展途上国の若手眼科医師を3か月間先進国へ派遣し、眼科に関する知識・技術の向上を図るものです。当社は、年間3人分のフェローシップ費用の寄付を継続的に行っています。若手眼科医師育成を支援することで、医療未充足エリアの医療水準向上に貢献していきます。2024年までに、マレーシア、タイ、エジプト、トルコ、メキシコ、インドの眼科医がそれぞれアメリカやフィンランド、ネパール、イギリスなどでの研修を終えました。2025年は新たにメキシコ、ネパール、イエメン、パキスタンの若手眼科医がそれぞれペルー、アメリカ、インド、イタリアでの研修を予定しています。

東南アジアにおける看護師の育成による医療アクセス向上

当社は、眼科医療従事者に対する教育において世界をリードする存在として国際的に広く認知されているSingapore National Eye Centre(SNEC)と2021年より戦略的パートナーシップを締結し、オンライン・オフライン融合型の革新的な教育プログラムの共同開発と国際展開を進めています。ベトナムをはじめ、インドネシアとフィリピンでも本プログラムを展開してきました。本プログラムでは眼科看護師を中心とした医師以外の医療従事者のスキルを向上させ、医療行為の一部を適切に委譲し、限られた医療人材を効率的に活用することを目指します。運営に必要となる費用は受講料から賄うことを原則としており、現地の教育機関が自立的にプログラムを運営し、収益面を含めて自走できるようにすることで、医療エコシステムの構築に努めています。
眼科医が眼科看護師に業務の一部を委譲することで、眼科医が診療できる患者数が増加します。これによって、従来は診療を受けることができなかった患者さんも診療を受けられるようになります。Santenは、こうした教育プログラムへの参画によって、より多くの患者さんに診療機会を提供し、その治療に貢献するとともに、当社製品が眼科医療において果たす役割のさらなる拡大を進めていきます。

眼科医療従事者への教育プログラム提供の全体像

眼科医療従事者への教育プログラム提供の全体像

途上国におけるデジタルヘルスプログラムを用いた啓発

 

当社は、国際連合の情報およびコミュニケーションテクノロジーの専門機関である国際電気通信連合(International Telecommunication Union、本部:スイス・ジュネーブ、以下ITU)と2020年1月より4年間のパートナーシップを締結し、ITUと世界保健機関(World Health Organization、本部:スイス・ジュネーブ)との取り組みである眼科領域における Be He@lthy, Be Mobile(BHBM)をサポートしてきました。
BHBMは各国政府と協力して、人々の健康的なライフスタイルの実現に向け、携帯電話やデジタルデバイスを用いた非感染性疾患の予防と管理の啓発を行っています。世界のほぼ全ての人々(約97%)は、携帯電話の電波が届く範囲で生活していると推測されていて、SMS(ショートメッセージサービス)やデジタルデバイスのアプリを通じたエンドユーザーへの健康に関する情報の配信など、デジタルヘルスのサービス内容および対象地域が拡大しています。何百万人もの人々がこのプログラムを利用しており、利用者の健康へ貢献しています。
この取り組みの一環として、病気に対する認識を高め、良いアイケア行動を促進することを目的とした近視に関する教育キャンペーンを実施、モニタリングするためのガイダンスなどが含まれているMyopiaEdというツールキットを2022年3月に発行しました。

アジアにおけるぶどう膜炎領域での眼科医教育プログラム支援

 

当社は、2021年よりインドのHyderabad Eye Instituteが運営するL V Prasad Eye Instituteへの寄付を通じて、特にアジアのぶどう膜炎領域における眼科研修医や開業医を含めた眼科医のオンライン教育プログラムを支援しています。
このプログラムは、約1年間にわたり、授業に加え、分科会や基調講演、症例検討会、相互交流会などの活動を行っています。初年度は約140名、2年目は約130名、3年目は300名以上が参加しています。インド国内のみならず、インド以外からの参加もあり、参加者からは有意義な機会だと好評を得ています。

ぶどう膜炎オンライン教育の様子

日本における研究者の育成

 

奈良研究開発センターは、2005年に国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学との連携講座として開設された「機能高分子科学研究室」の運営を担当しています。専門分野に精通した当社の従業員が客員教授、准教授、連携研究員として研究者をめざす学生を指導し、これまでに博士課程前期修了者15人、博士課程後期修了者4人を輩出しました。

研究室内での実験の様子

中国における眼科医育成

 

Santenは、中国の眼科医療の発展に尽力してきました。中国における眼科医の能力開発と専門性向上のため、1966年にSanten奨学金制度を設立しました。長年にわたり、眼科医療従事者育成のための多様な学術的支援プログラムを提供しています。これまでの奨学金の総額は2020年末までに21百万人民元に上ります。
さらに、当社は「緑内障標準化センター設立プロジェクト」を通じて、北京白求恩公益基金会と協働で緑内障診断と治療の標準化を推進してきました。このことは、多くの緑内障患者さんに恩恵をもたらすだけでなく、中国における診断と治療のレベルの向上につながっています。

2020年Santen奨学金制度覚書締結式
緑内障標準化センター設立プロジェクト第II期