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目のアレルギーの今を知る ―専門医 庄司純先生に聞く、 近年の疾患傾向と治療のポイント 目のアレルギーの今を知る ―専門医 庄司純先生に聞く、 近年の疾患傾向と治療のポイント

  • 病気を知る
2026年04月07日

近年、目のアレルギー疾患を取り巻く環境は、変化を見せ始めました。目のアレルギー疾患には、生活様式や居住環境の変化に伴う原因抗原(アレルゲン)の多様化、花粉症の低年齢化など以前とは異なる傾向が見られるようになり、薬物治療の進歩に加え医療従事者によるサポート体制にも新たな選択肢が広がりつつあります。一方で、治療に対する誤解から、抗アレルギー薬を適切に使用できずに薬の効果を十分に感じられていない患者さんがいるのも現状です。

今回は、目のアレルギー診療の第一人者である庄司純先生に、現在の目のアレルギー疾患の傾向や、適切な治療、医療サポート体制の動向についてお話を伺いました。
(取材実施:2026年1月16日、場所:庄司眼科医院)

 
庄司純先生のプロフィール写真

庄司 純
庄司眼科医院 院長/日本大学医学部 臨床教授
1985年日本大学医学部卒業。銚子市市立総合病院勤務、日本大学医学部兼任講師を経て、2002年に庄司眼科医院院長に就任。2007年より日本大学医学部視覚科学系眼科学分野 臨床教授を兼任。日本眼科学会専門医、日本アレルギー学会専門医・指導医。
眼科医として長年アレルギー疾患の治療に携わり、特に小児のアレルギー性眼疾患の診療に豊富な経験を持つ。講習会などを通じ、医療従事者の教育にも積極的に取り組んでいる。
 

目のアレルギー、今何が起きている?

―近年見られる目のアレルギー疾患の傾向について教えてください。

正確な統計を取っているわけではないので断定的なことは言えませんが、実感としては目のアレルギー疾患で受診される患者さんは増えていると感じています。特に、花粉症患者さんの増加に伴い、季節性アレルギー性鼻結膜炎※1による受診が増えてきました。

 

近年はスギ花粉だけでなく、白樺やハンノキなど、さまざまな花粉に対するアレルギーがより多く見られるようになっています。これに関連して、花粉が引き金となって花粉・食物アレルギー症候群(PFAS)を起こす患者さんも目立つようになりました。

※1 季節性アレルギー性鼻結膜炎:スギやヒノキの花粉などの季節性アレルゲンにより、アレルギー性の鼻炎と結膜炎が同時に起こる疾患。

早期の受診と適切な治療で、症状を改善

―季節性アレルギー疾患について、正しい受診のタイミングを教えてください。

一度季節性アレルギー性鼻結膜炎と診断がついた患者さんには、初期療法をおすすめしています。初期療法とは、花粉の飛散予測日の約2週間前、あるいは症状が現れる前から抗アレルギー薬の使用を開始する治療法です。症状の出現時期を遅らせたり、症状を軽くしたりする効果が期待できます。

 

季節性アレルギー性鼻結膜炎は、患者さんごとに発症時期はまちまちですが、個々の患者さんでは毎年ほぼ同じ時期に発症して受診する傾向がある疾患です。そのため、「毎年この時期に症状が出ていますから、来年はもっと早めに治療を始めましょう」と具体的にお伝えするようにしています。

 

一度初期療法の効果を実感すると、翌年からは自主的に早めに受診される患者さんが多い印象を受けます。

インタビュー中の庄司純先生の写真

―目のアレルギー治療について、患者さんが誤解しやすいことはありますか。

医師から「かゆみ止めの目薬を出しておきますね」と説明されることがあると思うのですが、「かゆい時しか使ってはいけない」と誤解されている患者さんが少なくありません。その結果、かゆみを感じた時にしか使用せず、十分な効果を感じられなかったという例もあります。

 

抗アレルギー薬は、単にかゆみを抑えるだけの薬ではありません。症状がないときでも医師が服用を案内した期間中、用法用量を守って使い続けることで、症状の発現や悪化を防ぐことも目的としています。その点を、医療関係者側が丁寧に説明し、患者さんにご理解いただく必要があると感じています。

 

また近年は、体質を改善する舌下免疫療法※2などの免疫療法や、アレルギー反応そのものを抑える抗体療法などの治療も登場しています。

※2 舌下免疫療法:継続的にアレルギー物質が含まれた薬を舌の下に投与することで、アレルギー反応を引き起こしにくくする治療法。

―治療効果を最大限に発揮するために、患者さんが心掛けるとよいことはありますか。

まずは、先にもお伝えしたように抗アレルギー薬の用法用量を守り、適正に使用することです。患者さんの中には「ケアから解放されたい」という思いから、症状が落ち着くと服薬をやめてしまう方や、次の受診日まで薬が足りなくなりそうだと判断し、使用量を減らしてしまう方がいらっしゃいます。しかし、治療効果を十分に得るためには、決められた期間、適正な量を使い続けることが大切です。

 

患者さん自身が「薬でどれだけ楽になったか」を実感できると、治療を継続するモチベーションが維持できます。そのために役立つのが、症状を毎日記録することです。最近は『かゆみダス』のように、スマートフォンで簡単に記録できるアプリもありますので、無理のない形で症状の記録を習慣化していくとよいと思います。

インタビュー中の庄司純先生の写真

医療従事者による連携で、さらにきめ細かいフォローへ

―アレルギー疾患のある患者さんへの医療サポート体制は、どのように変化していますか。

アレルギーは慢性疾患ですから、症状と長く付き合っていくことになります。患者さんは一人ひとり生活スタイルも症状の重さも異なるため、効果的な治療を行うには、きめ細かな診療と継続的なフォローが欠かせません。ただ、医師だけで対応するのは難しい場面も多く、患者さんに正しい知識を伝えたり、相談に乗ったりする役割を担う人材が必要です。

そうした存在として、近年はアレルギー疾患療養指導士(CAI)小児アレルギーエデュケーター(PAE)といった認定資格を持つ看護師、薬剤師、管理栄養士の方々が注目されています。一部の専門病院では、CAIによる治療や生活の指導が行われているところもありますが、資格取得者はまだ少なく、患者さんが気軽にアクセスできる体制が十分に整っていないのが現状です。

一方、全診療科に精通したアレルギー専門医(Total Allergist)を育成しようという動きも進んでいます。アレルギーは複数の器官に症状が出ることも多く、現状では症状が最も強い器官の診療科を受診するケースが一般的です。子どもの場合、小児科でまとめて診てもらうこともあります。将来的にはアレルギー専門医を核に、耳鼻科、眼科、皮膚科、内科、小児科等が連携しながらアレルギー治療を進めていくのが理想です。

助けが必要なときは頼ってほしい

―庄司先生が日々の診療で大切にされていることはありますか。

できる限り時間を確保して、患者さんの相談に丁寧に向き合うことを大切にしています。特に目のアレルギー疾患は、単なるかゆみだけの問題ではありません。目のアレルギー疾患に起因する重篤な症状で通学が困難になったお子さんが、適切な治療によって症状が回復し、通学が可能になるだけで無く、活発にスポーツや屋外活動を行う様になったケースもありました。患者さんの声に耳を傾け、正しい診断と治療をすることで、アレルギーのために子どもたちが学校生活に支障をきたしたり、日常生活で不安な思いをしたりすることのない社会にしたいというのが、私の思いです。

 

アレルギー疾患は生活の質だけでなく、社会生活にも大きく影響をきたす可能性があります。ぜひ症状を軽視せずに、早めに受診していただきたいと思います。医師はもちろん、NPO法人や患者友の会など患者さんを支えてくれる人や仕組みはたくさんあります。各都道府県には、アレルギー疾患医療拠点病院を中核とする医療施設が充実してきています。困ったときには、一人で抱え込まず、ぜひ誰かを頼るという選択肢を持っていただきたいですね。

ほほ笑む庄司純先生の写真