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新薬開発の最終プロセス ―患者さんの安全を守る 臨床開発の仕事 新薬開発の最終プロセス ―患者さんの安全を守る 臨床開発の仕事

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2026年05月29日

新しい薬が患者さんのもとに届く前、製薬会社は長い年月をかけ、多くのプロセスに及ぶ研究開発(R&D:Research and Development)に取り組んでいます。そして、研究開発の成功には医療機関など外部関係者の協力や、さまざまな分野のエキスパートの存在が欠かせません。

今回は、Santenの研究開発の最終段階を担う「臨床開発」に焦点を当て、日本アジア臨床開発グループ クリニカルマネージャーの稲井真哉に話を聞きました。

研究で生まれた可能性を「安心して使える薬」につなぐ最後のフェーズ

―臨床開発について、どんな段階なのか教えてください。

臨床開発は、開発された薬を実際に人に投与して効き目を確認し、安全性を検討する「臨床試験(治験)」を行うプロセスです。試験で得られたデータは、製薬会社が新薬を上市するために国への承認申請を行う際、薬の有効性と安全性に関する根拠となります。

 

Santenの研究開発プロセスには、社内のさまざまな部門が関わっています。たとえば、薬の有効成分となる化合物を見つける原薬開発、原薬から実際に患者さんが使用できる薬の製剤を設計する製剤開発、細胞や動物などで薬の効き目や安全性を検討する非臨床開発、承認申請をはじめとする各種手続きを担う薬事など。それらすべての仕事を承認申請につなぎ、安心して使える薬を世の中に生み出すために、研究開発の最終段階を担うのが臨床開発です。

Santenの研究開発プロセスについて説明する画像。化合物の探索・創製、製剤化、非臨床試験、臨床試験、承認申請の順で進む。

―臨床試験では、どのようなことを行うのでしょうか。

臨床試験は多数の協力医療機関を通じて実施します。具体的には、ラボで行う非臨床試験の結果から疾患に使用できると判断された薬を、あらかじめ試験内容の説明を受け、参加に同意いただいた方(一般募集で応募された健康な方や患者さん、または協力医療機関で治験参加に同意した患者さん)に使用していただきます。その後、使用後の検査データを集めて薬の効き目を確認し、安全性を検討します。

 

臨床試験は、少人数から始めて安全性を検討しながら段階的に対象を広げていきます。必要に応じて、開発中の薬を使用した場合と、既存の薬やプラセボを使用した場合を比較し、効果や安全性を詳しく検証します。

 

臨床試験で集めたデータの信頼性が十分でなければ、薬は国から承認されません。また、データの分析が不十分なまま使用されることがあれば患者さんに健康被害が及ぶ可能性もあります。そのようなことが起こらないよう、試験を正しく進めるのが私たちのミッションです。

※ プラセボ:有効成分を含まない偽薬のこと。臨床試験において、薬の効果を客観的に評価するための比較対照として用いられる。

取材中の稲井の写真

緻密な計画、確認と判断の積み重ねで、信頼性の高いデータを収集

―稲井さんのお仕事について教えてください。

私はこれまで20年以上にわたって、Santenで臨床開発の仕事をしてきました。臨床試験プロジェクトの立ち上げや実行の現場を中心に経験を積み、現在はクリニカルマネージャーとして、日本・アジア地域で行う試験のマネジメントを担当しています。

 

クリニカルマネージャーの主な仕事は、製剤開発や非臨床開発のチームと連携しながら臨床試験の計画を立案・推進していくことです。臨床開発はグローバル体制で進めており、日本以外の地域での承認や提供も見据えた試験では、各地域の規制や基準を踏まえた試験計画とする必要があります。そのため、現地の規制等に精通した海外のスタッフと英語でやりとりする機会も少なくありません。

 

試験自体は、モニター(試験の進行を管理・確認する担当者)が協力医療機関に赴き、ドクターや医療スタッフとやりとりしながら進めます。その間、クリニカルマネージャーは、モニターから上がってくるデータの確認、想定外のことが起こった際の判断、情報の交通整理などを行います。試験終了後、承認申請に必要なデータを取りまとめるのも大切な仕事です。

臨床試験実施に必要な項目について詳細に記載した治験実施計画書の写真

臨床試験実施に必要な項目について詳細に記載した治験実施計画書

―クリニカルマネージャーとしての手腕が試されるのは、どのような場面でしょうか。

臨床試験を始める前の細かな設定や、試験開始後に想定外の事態が起こった際の対応など、検討・判断を行うときです。

 

試験開始前には、検討すべき事項が無数にあります。例えば、患者さんの募集方法や人数、検査キットの搬入数、病院での保管の方法、薬の使用量や投与の方法、検査方法や評価項目など。一つひとつは小さいように見えるかもしれませんが、個々の判断が患者さんの通院負担や試験の安全性、得られるデータの信頼性に直結していくのです。

 

検査の項目を多くすればより正確なデータを得られますが、医療機関側の負担が増えてしまいます。かといって少なすぎれば信頼性の高いデータが得られません。また、検査のための来院の間隔が短ければ患者さんの通院負担が重くなりますが、間隔が開きすぎると投薬後の安全性の検証が十分にできなくなってしまいます。

 

こういった判断には1つの正解があるわけではなく、疾患の種類や対象となる医療機関、患者さんによっても状況は変わってきます。そのため、「患者さんの安全」「医療現場の負荷」「データの信頼性」この3つのバランスを取りながら状況判断を積み重ね、チームで計画を作り込んでいきます。

 

ただ、どれだけ精緻に計画を作っても、試験が始まると現場での判断が必要になることも多々あります。そのため、判断基準をしっかりと言語化し、すべての現場で一貫性のある判断ができるように備えています。また、試験期間中は異変があればすぐに気付けるよう、チームメンバーと密にコミュニケーションを取り、日々のデータをチェックするなど、緊張感を持って取り組んでいます。

取材中の稲井の写真

医療機関との信頼関係を大切に、相手の立場で考える

―稲井さんが仕事をする上で大切にしているのは、どのようなことですか。

相手の立場で考えることです。

製薬会社にとって臨床試験は、薬を世に出すために欠かせないプロセスですが、協力医療機関や対象者の方には負担をお願いすることになります。医療機関も患者さんも、製薬会社を信頼できなければ、協力しようとは思えないでしょう。だからこそ、一方的にこちらの事情を押し付けてはなりません。

かつて、私がモニターとして医療機関に出向いていた頃は、医療機関側の事情を代弁して社内を説得することもありました。いまはマネージャーとして、時には会社側の事情を踏まえながら、医療機関と交渉しなければならない場面もあります。それでも、まずは相手の立場で考え、相手の意見に耳を傾け、誠実に対応する姿勢を忘れないようにしています。

―臨床試験を通じて、Santenの強みを感じることはありますか?

眼科医からの信頼の厚さを感じる場面はあります。実際に「Santenの臨床試験なら安心だね」と受け入れていただいたり、Santenの社員は眼科の知識やカルテを読む力があると評価いただいたりしたこともあります。眼科領域に特化した事業展開や、MR(医療情報担当者)による情報提供を通じた医師との関係構築が、信頼につながっているのではないでしょうか。

本質を考えて行動する。「何も起こらない」のがいちばんの成果

―稲井さんはどのようなときに、仕事のやりがいや達成感を感じますか。

試験が安定して進み、予定通りに完了したときですね。

 

臨床試験はGCP(Good Clinical Practice)という国際的なルールに基づいて計画・実施され、国への必要な届出や確認、協力医療機関の倫理審査を経る必要があります。守らなければならない規則や基準はありますが、試験の進め方は薬によって毎回異なり、慎重に計画を立てても想定外の事態は起こるものです。

 

臨床試験が始まると、クリニカルマネージャーの出番は「想定外の事態」への対応が中心になります。だから、できるだけ私の出番がないのがベストです。それが、患者さんの安全を守り、医療の現場に過剰な負担をかけず、順調に試験が進んでいる何よりの証拠なので。

取材中の稲井の写真

―稲井さんが今後目指していきたいのはどんなことでしょうか。

今後も、多くの部署が関わった研究開発の結果を、正しく患者さんに届けられるように役割を果たしていきたいです。そのために、GCPが重視している「患者さんの人権と安全」を最優先に考えながら、臨床試験の設計と実施に取り組んでいきます。

Santenは、創業以来、眼科を中心とした専門分野に注力し、本質的な価値を追求することで、患者さんと患者さんを愛する人たちへの貢献を続けています。そして、その精神は私自身の中にも自然と染みついています。一つひとつの仕事に誠実に向き合い、患者さんが安心して使える薬を届けていきたいです。

 
稲井のプロフィール写真

稲井 真哉(いない まや)
製品開発本部 臨床開発統括部 日本アジア臨床開発グループ クリニカルマネージャー

2001年Santen入社。研究部門を経て臨床開発に異動。以来一貫して臨床開発業務に携わり、現在はクリニカルマネージャーとして日本・アジア地域の臨床試験マネジメントを担当している。
趣味は温泉旅行。美味しいものを楽しみながら、ゆっくり過ごす時間を大切にしている。