野村 健太(のむら けんた)
滋賀製造3チーム 工程責任者
薬を患者さんに届けるためには、研究開発の後に、それを確かな品質で製品として形にする「製造」の力が欠かせません。Santenでは国内外3か所に生産拠点を構え、確かな品質の薬を安定して患者さんへ届けるため、多くの社員が製造を支えています。
今回は、滋賀プロダクトサプライセンターの製造部門で、入社7年目にして製造ライン責任者を任され、新ラインの立ち上げや導入にも携わる野村健太に、これまでの挑戦の道のりと仕事にかける思いを聞きました。
研究開発部門で多くの社員が努力を積み重ね、開発・設計した薬を、患者さんが実際に使える製品の形にする。それが私たち製造部門の役割です。どれほど優れた薬が開発されても、私たちが製品として製造できなければ、患者さんのもとへ届けることはできません。また、製品として形にできたとしても、安全性や有効性が損なわれた製品では意味がありません。だからこそ、製造現場では「品質第一」という考え方を何よりも大切にしています。誰が作業しても同じ品質を再現できるよう、一つひとつの工程には手順が定められており、それを確実に守ることが求められます。
製造では、原料の秤量から調剤、充填、検査、包装、出荷まで、多くの工程を専門知識を持った社員が担っています。私は2017年に入社して以来、主に製造ラインで「調剤」「充填」「検査」の3工程に携わってきました。最初の5年間はスリーピース容器※1の製造ラインで各工程の経験を積み、その後、新棟※2に新設されたSUDライン※3で製造ライン責任者をしています。
※1 スリーピース容器:ボトル・キャップ・中栓3つの部品を組み合わせる製品
※2 2022年、滋賀プロダクトサプライセンターでは、生産性向上を目指して敷地内に新たに第3棟を竣工。野村は第3棟に新たに設置するSUDライン立ち上げ・導入に参画後、2024年から新ラインの責任者に就任。
※3 SUD(シングルユニットドーズ)ライン:使い切り製品を製造するライン
製造ライン責任者の役割は、担当するラインを安定して稼働できるよう管理することです。責任者は、細かく定められた工程や作業手順が正しく守られているかを管理するとともに、現場で問題点や改善点が見つかった際には、対策を講じ、変更事項を製造手順に落とし込んでいきます。
例えば、測定機器の故障によるデータ未取得など、定められた手順、規格、条件から外れてしまうことを「逸脱」と呼ぶのですが、その内容の大小にかかわらず、医薬品製造では品質へ影響を及ぼす可能性があります。そのため、逸脱が発生した際には原因を究明し、品質への影響や手順変更の必要性について、関係部署と議論を重ねながら判断します。その後は、メンバーと協力しながら実際の手順改定やマニュアル作成など、必要なアクションを進めていきます。
初めて製造ライン責任者を任されたときには、嬉しい気持ちと、大きなプレッシャーの両方を感じました。「本当に自分に務まるのだろうか」という不安もありましたが、成長の機会だと捉え、挑戦することを決めました。今でも、自分より経験豊富なメンバーと一つのチームをつくり、まとめる立場としてどうふるまうべきか、日々自問自答しています。
一方で、この仕事ならではの大きなやりがいもあります。設備の調整によって生産性が向上したときや、検査性能が改善したとき、あるいは現場のメンバーがより安全かつ効率的に作業できる工程手順を構築できたときには、アイデアが現場に貢献できたという手ごたえを感じます。
ただし、医薬品製造では、やみくもに変更を行うことは決して良いことではありません。変更が頻繁に行われれば「これまでの手順で製造した製品は本当に適切だったのか」という議論にもつながりますし、現場にも混乱を招きます。そのため、変更を行う際には、事前に関係部署へ相談し、さまざまな立場の意見を聞きながら進めることを大切にしています。また、変更の意義や期待される効果について丁寧に説明し、互いに納得感を持って進められるよう心掛けています。
関係者が多いからこそ難しさもありますが、その改善が現場に定着し、「工程が良くなった」「作業しやすくなった」という声をもらえたときは、大きな達成感がありますし、この仕事を続ける原動力になっています。
これまでの仕事の中で、最も印象に残っているのは、入社5年目に参加した新棟立ち上げプロジェクトで、答えが決まっていない課題に向き合った経験です。
それまでは、すでに確立された手順に沿って製造を行えば、一定の品質や安全性が担保される環境で業務を行っていましたが、新棟の立ち上げはまったく異なりました。例えば検査機一つを取っても、品質基準や規格は決まっているものの、その基準どおりに判定できるよう機器を設定し、検証しなければなりません。どの設定が最適なのか、試行錯誤を重ねながら一つずつ条件を詰めていく必要がありました。最適解を見つけ出すため、既存ラインや能登工場のSUDラインで採用されている工程手順も参考にしながら、メンバー同士で知恵を出し合い、ゼロからラインをつくり上げていきました。
その過程で特に難しかったのが、多くの部署と議論を重ねながら、全員が納得できる着地点を見つけることでした。製造チームとしては、品質はもちろん、設備を安定稼働させることも重要な使命です。一方で、品質保証チームや設備チームは、それぞれ異なる立場や役割から物事を見ています。そのため、ある部署にとって最適な方法が、必ずしも製造現場で運用しやすいとは限らないのです。
だからこそ、「製造としてはここまで対応できます」「この方法では現場での運用が難しいです」と現場の実情を丁寧に説明しながら、必要に応じて代替案も提案し、お互いに納得できる方法を探していきました。
他部署と建設的な議論をするためには、まず製造チームとしての考えをきちんと整理する必要があります。製造チームとして何を伝えるべきか、チームの先輩方に自分の考えを伝え、その都度フィードバックをいただきました。先輩方と考え方が一致すれば自信になりますし、違っていても新しい学びになります。漠然と相談するよりも、まずは恐れず自分の考えを伝えることを心掛けました。このプロジェクトは、周囲と協働して仕事を成し遂げる力を身につけることができた、大きなターニングポイントだったと思います。
私自身が新棟立ち上げプロジェクトという大きな挑戦の機会をいただいたように、滋賀プロダクトサプライセンターは、若手にも積極的にチャンスを与えてくれる環境だと感じています。新入社員の育成にも力を入れており、いつまでにどの社内資格を取得するかを新入社員と一緒に計画し、その進捗を継続的にフォローしています。また、教育担当が一対一で付き、キャリアについても一緒に考え、道筋を示してくれるなど、若手の成長を支える制度が整っているのは、非常に恵まれているなと感じます。
現在は、新棟に新設される製造ラインの導入プロジェクトにも携わっています。前回の立ち上げでは途中参加でしたが、今回は設備メーカーの選定や設備仕様の検討といった、より上流の工程から参画しています。製造現場で実際に設備を使う立場だからこそ、「現場にとって使いやすい設備とは何か」を考えながら意見を出し、スムーズに立ち上げられるラインづくりに挑戦しています。新しい製造ラインをゼロから形にできることに、日々とてもわくわくしています。
製造ライン責任者としての道のりは、まだ始まったばかりで、「野村さんに聞けば何とかなる」そんなふうに周囲から信頼される存在になることが、今の目標です。これからも探究心を持って知識や経験を積み重ね、患者さんに安心して使っていただける製品を届け続けていきたいと思います。
石田 義信(いしだ よしのぶ)
滋賀製造3チーム チームマネージャー
野村さんは、何が良くて何がダメなのか、是々非々で考えてイエスとノーを言えるところが最大の強みではないかと思っています。上司や周囲の意見にも耳を傾けたうえで、自身の考えを整理して発言するため、その言葉に正当性とバランス感覚があります(悔しいほどに)。肝心なことを見失わないという点で、Santenの行動原則※4を地で行く社員です。
若くしてリーダーを務める野村さんの姿は、若手メンバーの良い目標になっており、周囲の成長にも影響を与えています。これからもその姿勢を強みに、製造現場を支える存在として活躍してくれることを期待しています。
※4 Santenの行動原則:肝心な事は何かを深く考え、どうするか明確に決め、迅速に実行する
野村 健太(のむら けんた)
滋賀製造3チーム 工程責任者
2017年Santen入社。スリーピース容器の製造ラインの調剤、充填、検査工程のオペレーターを務めたのち、2022年~2023年、滋賀3棟立ち上げプロジェクトに参画し、SUD充填、検査ラインの立ち上げ業務を担当。2024年からSUD製造ラインの製造ライン責任者。2026年からは新たに、滋賀3棟新ライン立ち上げプロジェクトに参画している。趣味はゲームと音楽鑑賞で、どちらもその世界観に没頭することで非日常を楽しんでいる。
※プロフィールは掲載時点の情報です。