昨今、ドライバーの健康起因や高齢化による交通事故が後を絶たず、社会課題となっています。情報の8割は「視覚」から得ていると言われる大切な目の機能の低下や病気は、重大な事故につながる可能性があります。例えば、進行すると失明につながる緑内障を患うと、正常な人に比べて自動車事故を約7倍起こしやすいという研究成果も報告*1されています。目の不具合やトラブルは、ドライバーにとって見逃せない危険因子と言えます。

*1
Haymes SA, et al. Risk of falls and motor vehicle collisions in glaucoma. 2007

2022年3月に国土交通省が「自動車運送事業者における視野障害対策マニュアル」を策定し、睡眠時無呼吸症候群、脳血管疾患、心臓疾患・大血管疾患と並び、視野障害による運転リスクとその対策を周知しました。これにより、業界全体でドライバーの目の健康の重要性への理解が進んだものの、事業者における具体的な取り組みは、まだ試行錯誤であり、経営課題のひとつになっています。

今回は、運輸事業者に対して視野障害の運転リスクを周知し、ドライバーの目の健康を維持するためのソリューションを提供している東京海上ディーアール株式会社(以下、TdR)の川本氏と高橋氏にインタビューしました。具体的な取り組み内容や今後の挑戦などをお聞きしましたので、ご紹介します。

「安全指導・教育のノウハウ×眼科領域における専門性」でプロドライバーの交通事故防止を支援

TdR運輸・モビリティ本部は、データに基づくリスク分析や安全管理体制構築支援を強みとし、交通事故防止や輸送の安全性向上に関するコンサルティングを提供しています。

TdRが長年培ってきた安全指導・教育のノウハウを生かした「視野障害に関する啓発から眼科受診勧奨までの目の健康管理体制の構築支援」と、眼科領域に特化したSantenが開発した4つの眼疾患(ドライアイ緑内障加齢黄斑変性白内障)をセルフチェックできる「サンテン・オプティなび®」ツール組み合わせたプログラムの利用を、事業者に推奨しています。

プログラムをきっかけに、ドライバーの目の不具合が発見されることは、事業者とドライバーの両者にとって受け入れがたいことかもしれません。しかし、目の病気やトラブルを早期に発見し、適切な治療により視機能を維持することができれば、結果的には長く安全に活躍できる可能性があるため、TdRは視野障害の運転リスクを事業者に周知し、眼科受診を後押しできる仕組み作りに日々、尽力をしています。

緑内障の見え方(片目で見た場合)

 

初期

中期

末期

<サンテン・オプティびゅう より>
※見え方はイメージであり、個人差があります。

「ドライバーの目の健康支援プログラム」を利用した事業者の声

TdRが提供する目の健康支援プログラムを利用する事業者からは、次のような声が寄せられているそうです。

・目の健康がどれほど重要か、この取り組みを通じてあらためて気が付いた
・目の病気に関する知識だけでなく、セルフチェックを通じて目の健康状態を知ることができるのは説得力がある
・安全運転確認の基本動作を初心に戻って見直すきっかけになった
・眼科受診も業務の一環として捉えることで、積極的に通院してもらえるのではないか

 

一般的に、視機能は加齢に伴い衰えると言われています。また、日本人の中途失明原因の第1位に挙げられ、40歳以上の20人に1人、70歳以上の10人に1人は患っていると言われる緑内障は、病気がかなり進行するまで自覚症状はほとんどありません。
TdRは「ドライバーに眼科受診を促すために、例えば事業者がドライバーの労務時間中の眼科受診を認め、推奨するなどのサポートがあると、視野障害による運転リスクの更なる認知向上と、その解決に向けた具体的な取り組みが広がるのでは」と期待しています。

ドライバーの健康管理は、事業者の経営上のみならず、社会的・経済的な機会損失を低減するための優先課題であり、ひいては生活者が安心して暮らすためにも、業界・社会全体がさらに意識を向上することが大切です。

TdRの川本氏のセミナーにメモを取りながら聞き入る運送事業者の方々
(公益社団法人愛知県トラック協会主催2023年度第3回事故防止セミナー)

「ドライバーの健康」に社会の関心が高まる世の中へ

 

TdR運輸・モビリティ本部で主任研究員を務める川本拓馬氏とプログラムの運用を担当する高橋千晶氏は、今後の取り組みについて、次のように話します。

「今まで優良ドライバーだったのに、なぜかわからないけど事故を起こした、信号を見落とした、という話を聞くことがありますが、そういったケースでは眼疾患が一つの要因と考えられます。ドライバーの目の健康支援は、企業として取り組むべき課題であるという認識をもっと高めていきたいと考えています。そのためにも、当社の持つデータ分析の強みを生かし、セルフチェック後に眼科受診や検診はいつ行ったかなどを追跡し、その結果や効果を定量的に事業者にご提供することに取り組んでいきたいと思います。運輸事業者だけでなく業界団体、自動車メーカーなどとも連携をして現状の課題をしっかりとヒアリングし、これからもドライバーの交通事故の防止につながるサービスやソリューションの開発・提案を行って参ります(川本)」

東京海上ディーアール株式会社
運輸・モビリティ本部
主任研究員 川本拓馬氏

 

東京海上ディーアール株式会社
運輸・モビリティ本部
高橋千晶氏

「運輸業界の人手不足は深刻と言われています。ドライバーの確保や人材教育とともに、長く安全運転を続けてもらうための健康面のサポートにも、どれだけ事業者が目を向けて投資をしていただけるか、が重要なポイントだと思います。例えば定期的な眼科検診を実現するため、眼科受診を業務の一環と考え制度化するなど、結果としてそれらの投資で得られる中長期的な利益の方が大きいというデータに基づいたエビデンスを出すことができれば、ドライバーの視野障害による運転リスクへの具体的な取り組みがより進むと考えています。これからもパートナー企業の皆さま方と協業をし、運輸業界全体の安全性向上につながる体制の構築・強化をご支援して参ります(高橋)」

緑内障患者さんに早期発見・早期治療の啓蒙活動「世界緑内障週間」

緑内障は早期発見・早期治療を行うことで、病気の進行を遅らせることができます。しかし、日本のみならず世界中で「よくわからない病気」と捉え、無関心な人が多いのが現状です。一人でも多くの人に緑内障について正しい知識を持ってもらうことを目的に、毎年3月に啓発キャンペーン「世界緑内障週間」が実施され、今年は3月10日(日)から3月16日(土)に行われます。

Santenも、活動の主旨に賛同し、世界各国で様々な啓発キャンペーンを実施し、SNSなどを通じて情報発信しています。ぜひこの機会に、あなたの大切な目の健康について考える機会としませんか。

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