Santenは国籍、年齢、信条などにとらわれることなく、すべての従業員の尊厳を守り、個々の力を最大限に発揮できる組織を目指しています。なかでも、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンは私たちの重要なテーマの一つです。女性のエンパワーメントに向けても、グローバル全体でさまざまな施策を推進し、グループ連結での女性従業員比率は44.1%、女性管理職比率は40.4%と、ジェンダー平等が進んでいます

そんなSantenのダイバーシティを体現する存在ともいえるのが、生産戦略ヘッドを務めるト・シュンエイです。中国出身で、現在は日本の滋賀プロダクトサプライセンターに勤務しているト・シュンエイに、これまでのキャリアや今後の夢について聞きました。

  • 2023年度の数値

医師から製薬業界へのキャリアチェンジ、薬を処方する側からつくる側へ

私は大学卒業後に外科医として勤務し、家庭の都合で転居したのを機に日系の製薬会社へと転職しました。その頃ずっとドライアイに悩んでいたのですが、ある日、眼科で処方された目薬を使ったところ、1週間ほどですっかり症状がおさまり、その効果と品質に感動したのを憶えています。それから医療用点眼薬に興味を持つようになり、転職のオファーをいただいた際には「Santen」と聞いて二つ返事で承諾しました。

2012年に中国の現地法人に入社して、最初は薬事と政府関連の業務を担当しました。2017年には蘇州工場の工場長を拝命し、2019年からは約13万平方メートルの新工場「Santenビジョンパーク」を竣工するプロジェクトのプロジェクトマネジャーも務めました。そして2024年の2月には、海を越えて日本の滋賀プロダクトサプライセンターに赴任。現在はSantenのグローバル生産戦略の立案と実行をリードしています。

医師の頃は患者さん1人ひとりと向き合って治療していましたが、いまは製品の供給を通して、より多くの患者さんに貢献することができます。製薬会社での仕事は、自分が社会の役に立っていることを実感でき、日々徳を積むことができる、すばらしい仕事だと感じています。

悔しさをばねに猛勉強、視野を広げる大切さに気付いた

 

Santenに入社してからは、新しい仕事にチャレンジする機会を次々と与えてもらい、困難に遭遇しては必要な知識やスキルを身に付けて乗り越えてきました。部下や同僚にも助けられ、多くの上司からさまざまなことを教わりながら成長できたことに、とても感謝しています。

もちろん、成長には苦痛も伴います。たとえば、蘇州工場の工場長に任命されたときには、私は薬事や政府関連の業務には精通していたものの、品質管理やサプライチェーン、工場管理に関する知識や経験は不足していたため、働きながら大学院に通い、MBAの学位を取りました。熱意を頼りに部下と一緒に頑張っていましたが、あるとき上長から「あなたは戦略視点が低い」という指摘を受けたのです。精一杯やっていただけに、ショックでした。

悔しくてなかなか受け入れられませんでしたが、その気持ちをばねに、業界の潮流や最新事例について調べ、ビジネス書で戦略について学ぶなど、猛勉強しました。そうするうちに、上司の言葉が正しかったことを理解しました。当時の自分は短期的な目標ばかりに目がいき、製造業の動向や、会社全体における蘇州工場の位置づけ、中長期の事業環境の変化を見据えた工場の将来像までは考えていなかったのです。

知識があれば、広い視野から俯瞰的にものごとを理解することができます。一方、知識不足は視野を狭め、進歩の妨げとなります。そのことに気付いてからは、工場長として働きながら学び続け、サプライチェーンプロフェッショナルの資格を取得しました。いまになってみれば、当時の上司からとても大切なことを教わったと思います。

多様性を受け入れる文化の中、同僚たちと切磋琢磨

 

さまざまなバックグラウンドや異なる専門性を持つ同僚たちからも、たくさんのことを学びました。

グローバル企業ではそれぞれの担当業務や責任の範囲がしっかり決まっているのが一般的ですが、日系企業では、役割の境界を明確にせずチームで仕事を進めることは珍しくありません。日本は「ハイコンテクスト文化」だと言われますが、詳細な業務の分担まで明確化せずとも、担当者が“空気を読んで”自発的に動いてくれることが多いのです。一方、諸外国ではそういった感覚は通用しません。会社のグローバル化が進む中、役割分担があいまいなまま仕事を進めてしまったことでプロジェクトマネジメントにおける難しさを経験し、大きな教訓を得る機会となりました。仕事のやり方は国や文化によって少しずつ違います。多様性を受け入れるには、異なるバックグラウンドへの敬意を持つことが大切だと気付き、それ以降は同じ誤りを繰り返さないよう気を付けています。

Santenには、日本企業の実直さと外資系のオープンさの両方を合わせた文化があります。患者さんのためになることであれば、立場が異なっても連携し、良いことは良い、間違っていることは間違っていると、言い合うことは推奨されています。自分が女性だからといって、仕事において不利だと感じたことは、中国でも日本でもこれまで一切ありません。誰もが、ひとりのビジネスパーソンとして仕事の成果を追求できる、働きやすい職場だと思います。

患者さんへの貢献を信念に、日々の仕事に最善を尽くす

中国で工場長を務めながら新工場建設のプロジェクトマネジャーをしていた頃は、様々な課題に直面し、仕事が思うように進まないとき、「もう辞めたい」と何度も思いました。一方で、私は負けず嫌いな面があり、仕事を中途半端に投げ出すことは自分に対して許せません。「この仕事が成功したら、新たな雇用の創出につながり、患者さんにも社会にも貢献できる」そんな信念を持って、困難を乗り越えてきました。

どうしてもネガティブな気持ちになるときには、そこから気をそらすことを心掛けています。たとえば寝る前にお香をたいたり、ヨガでリラックスしたり、好きな本の世界に没頭して現実世界のことを忘れたり。休日には旅行に出かけたり美味しいものを食べに行ったり、できるだけ好きなことをして自分の心を平穏に保つ工夫をしています。

 

旅行で訪れたマレーシア・ピンクモスクやインドネシア・バリ島での一コマ

「目の前の仕事をきちんとできない人に、夢を語る資格はない」。これは、製薬業界に入ったばかりの頃、親しい人から言われた言葉です。これからもこの業界で、患者さんのために高品質の製品を安定供給し続けることが、私の夢であり使命だと本心から思っています。夢の実現のためには、まず日々の仕事と誠実に向き合うこと、そして勉強を継続すること。どのような将来が待っているかは誰にもわかりません。だからこそ、いま自分ができることに最善を尽くしていきます。

 

参天製薬株式会社 生産戦略ヘッド
ト・シュンエイ

外科医、日系の製薬会社勤務を経て、2012年に参天製薬(中国)有限公司へ入社。薬事マネジャーとして入社し、薬事部長、蘇州工場の工場長と新工場「Santenビジョンパーク」建設プロジェクトのプロジェクトマネジャーなどを務め、2024年より現職。

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